教室には誰よりも早く入り、板書が始まる 放たれた薄絹は、波を描いて落ちてゆく 空気をたっぷり含んだ和紙に包まれ∞を描く 骸骨のキーホルダー、蛇の骨のネックレス、紙風船、天秤、独楽、数珠、張り子の虎…どれもからだの動きを教えてくれる「導具」 野口体操の「ヨガの逆立ち」は、揺れ続けること
両手で作る無限階段を落ち続けるトムボーイ 小石川植物園のメタセコイアの林を散歩する野口先生と羽鳥 野口庭の狭い敷地には、様々な植物が元気に生きていた 鞍馬苔が繁茂する庭の一角 野口庭の隅に薇が出てくる季節になると、毎年教室に持ってこられた
野口邸の片隅に置かれた岩石、鉱物、化石 和紙に触れる。軽くて、しなやか、柔らかく、暖かい感触を味わう 折り紙の蛇を操る。波の動きは生き物のうごき 夏のミネラルフェアを前に行われる勉強会 甲骨文字が書き込まれた野口ノート

砂のアラベスク… 砂に潜む生命の囁きを …

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 月には砂はあっても土はないという。月の沙漠は、砂嵐さえおこらない静寂の世界だ。それに引き変え、大気に守られ。生命が宿る水惑星地球では、空を覆う砂塵が舞い、鉄を含むサハラの砂が混じる赤い雨がパリの街に降る。
 一握りほどの庭土をシャベルで起こす。繰り返し水で洗う。鉱物のかけらが陽射しに輝くが、完全に有機物を洗い流すことはできない。地球の砂には、どこか生命の痕跡が残されている。
 風・雨・氷・光・熱は山を崩し、川の流れは陸を削る。侵食は進んで、河は渓谷を産み、風は風化した岩石の破片を砂塵となす。波は磯を荒い、運ばれた砂を細かく打ち砕き、更に海洋へと運び去る。堆積岩層が海底に生まれ、あるものは移動するプレートへ滑り込む。生命の時空を超えた循環が、水を介して岩石をマグマに戻し、また地上に吹き上げ山を造る。砂は、水・岩石の循環の境界線を越えて、さらさらと流れ続ける。
 ある人はアフリカの夜空の星をみたといい、ある人はバリの浜辺で海の子守歌をきいたという。そう語りながら、野口三千三に預けられた世界の砂の数々。砂漠の砂に生命の名残り、海砂は貝や珊瑚の万華鏡、ガーネットが散りばめられた南極の砂…。
 砂は地球の細胞だ。命なき細胞は、ある時、命ある生命体に変化していったに違いない。自然は常に変化流動してやまない。
 ダイナミックな乱流の渦の中で、地球は生きている。
「砂に潜む生命の囁きを貞くのだ」と、野口三千三は静かに語る。

羽鳥操




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